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2012年10月14日日曜日

銀行事務という仕事を俯瞰して


日本の銀行の事務は『ミスはしない。出来て当たり前。』の水準がものすごく高いと思います。
私の経験上は半年間だけしか事務セクションにいなかったので深い所まで事務を学ぶには及んでいないのですが、それでもバックオフィスに行くと、事務量とその高度さと、属人性度合い(特に検印者や古株)に度肝を抜くと思います。『手管理・エクセル』で事務ミスしないようにと、敬意を覚える程に。まぁそれまで事務を経験してこなかった、あるいは知らなかった人は、きっと事務に対する考え方が変わりますよ。
実際にバックオフィスでは、彼らの仕事量というか難易度の高い仕事に加えて『絶対に』事務ミスをしてはならないし期日までに終わらせるというプレッシャーがある訳です。例えばカウンターパーティの手続きの遅れやミスが原因だったりするにも関わらず、期日までに確認・調整してなんとかしなければならない。その独特で複雑な板挟み感はフロントにいたら味わえない感覚でしょうね。。。


そういう観点では、事務ミスがなかった事を素直に賞与体系で評価する事も大事だと思いますし、システム化やフロー改善によって事務の効率化・ミスを抑える動きも積極的に評価されるべきだと思います。そして、新業務や新商品の導入にあたっての事務体系の整理や構築に対するインセンティブも付与すべきだとも思います。(ただし行き過ぎて事務ミスを『しない事』原理主義に陥ると不幸な結果となるとも思います。結果としては創造的な動きや業務拡大を阻止する動きを生むでしょうね。きっと。)

一番どの銀行にとっても損になることが想定されるのは、直接の顧客接点はカバレッジ部隊と言えど「俺様のおかげ」みたいな歪んだフロント意識でしょうね。この見えないけどヒシヒシと感じさせるヒエラルキーこそが全社的フロント/ミドル/バックを機能させなくする要因となるでしょう。イケイケドンドンな営業をしまくるとコンプラ問題にもなり得ます。だからこそ本部の司令塔、審査や事務セクション含むミドル/バック・オフィスが牽制役としても機能する訳です。そこに無駄なヒエラルキー構造があってはならない。だからカバレッジとプロダクト、バックオフィスを別ける理由は、仕事量負担の分散のみならず健全な金融機関として機能するためでもあるのです。

金融機関サービスというものは、MAにしろ流動化にしろ融資にしろ運用にしろ代行にしろ、最終的には"事務"を売ることと直結します。高度な金融ビジネスの背後には事務の品質が問われる。非常に精神論的で柔らかい議論なのだけれども、フロントもミドルもその事実を忘れず、バックもその事実に誇りを持っていけば機能不全に陥らずに済むのではないでしょうか。


2012年8月18日土曜日

選択と価値

〜京都の老舗和菓子屋の話から本当のCSについて考える〜


以前研修の集まりで、偉い人から『営業の心構え』についてレクチャーがありました。その中で紹介された面白い小ネタを本ブログで共有しようかと思います。これは某証券会社の常務が新入社員たちに問うて答えられた新人がその後役員になれたという逸話のあるクイズです。


京都の由緒ある老舗ブランドの和菓子屋で丁稚(でっち:見習いの子ども)が表玄関の掃除をしていたら、物乞いが来店してきた。どうやらお金は十分にある様だった。それでも丁稚は物乞いを追い返した。そのことを店主に報告したら叱られた。

という話なんです。さて、その叱られた理由は何故か?というのが本クイズ。

「ホームレスだからといって差別してはいけない」からでしょうか。
「お金を持っているんだから平等に扱えば良い」からでしょうか。

もし仮に自分が物乞いだとしたら、お金を持ったら真っ先に何にお金を使うでしょうか?
普通、衣・食・住に関する消費を優先するのではないでしょうか。

それでもこのクイズの場合、物乞いは選択肢として他でもなく和菓子を選んでくれた。
その場合、通常客と物乞いのお金の価値は同じ額でも違うだろう。
だからこそ、通常の感謝以上に対応するべきであったのではないか。

というのが趣旨に沿う答えでした。


勿論このクイズには決まった正解など無いのですが、
このクイズは、「立場を完全置換すること」と「選択と価値」に着目して欲しいという趣旨の問いなのです。
確かにそう考えると、物乞いが手に握りしめたお金の価値が違って見えてきます。

昨今、どの企業も“顧客志向”や“CS(カスタマー・サティスファクション)”を強調して謳われているがために、かえって安易に捉えられがちです。そんな中このクイズは、敢えて立場を置き換えにくいであろう“物乞い”という人物を設定することで「どんな顧客も平等に扱い、差別してはならないから」では辿り着けない顧客志向の境地があるのだと気付かせてくれます。

顧客の立場、そして選択と価値を熟考することによって、『顧客の顔』が見えてくる答えではないでしょうか。
意識を完全に顧客へ置き換える(顧客になりきる)ことが営業における差別化のヒントとなり得る、
そう思えたクイズでした。



P.S.
お久しぶりです。都心は最高に暑い日が続いておりますね。炎天下ではクールビズも効果は余りありません。都内JRの駅ではポケモンのスタンプラリーをやっていて、お父さんと回っている子供の姿をあちこちで見かけます。随分と更新していなかったのですが、実はこの度連休を頂いて束の間のニート気分を堪能しております。
仕事をされている方は、日本経済浮上のため頑張って下さい笑


2012年1月29日日曜日

リーダーシップとは何か?

何かを成し遂げるリーダーをリーダーたらしめるには、ムーブメントの集団が必要であり、そのために必ずリーダーについていく人間がいることが重要なのだと思う。youtubeでTED動画を見ながらそう感じた。


この動画は組織がどのようにして形成されるかをたった3分で的確に説明している。リーダーといえば、何でも出来る人のように見えても、実際は孤独で自分のやっていることが本当に正しいのかいつも気にしている存在なのだ。それを隠して虚勢を張っている人では組織は回すことは出来ない。ある意味、リーダーは《人たらし》でなければならないと思う。ハッチャケ感はムーブメントを実現するために必要な要素なのではないか。


次に大事になってくるのは、この組織/活動をどう継続させていくか。マンネリ化はいつか訪れる。競合もいつか現れる。そういう時に、それまで社会に対する《改革》していた段階から自己組織に対する《改革》という経験を経た上で生き残った会社組織の本を読んだので、何かヒントになると思いbooklogにまとめてみた。その本の紹介をして今日のブログは終わりとしよう!


アニータ・ロディック
トランスワールドジャパン
発売日:2005-12

〜社会貢献とビジネスは相反するのだろうか?〜
否、一致することは可能なのだと本書は教えてくれる。

本書は、女性起業家で有名ブランド「THE BODY SHOP」の創始者アニータ・ロディックによるパワーに満ち溢れた自伝。昨今になって《社会起業》という言葉を多く見かける様になったが、美容化粧品ビジネスの中でも先駆けて天然原料、動物実験の反対、BOP、フェアトレード、健康美、女性進出等を働きかけ、政治的活動までしてきた企業である。特に驚いたのは「ビッグ・イシュー」に元々ボディショップが関わっていたことを初めて知った。

素晴しい製品を創ると、人々がそれゆえに利益をもたらしてくれる。それこそがビジネスでありコミュニティなのだと著者は主張する。実際に本書を読んで、アニータが経営をしていた時までは会社/取引パートナー/市場/社会を《コミュニティ》として捉える意識が非常に強い企業である印象を持った。

ただ残念なことに著者の思考には偏りがある。特に資本主義を毛嫌いしている感があり、読んでいる自分としては同意出来ない部分が多くあった。ただそれでも尊敬する点は、起業家としての愚直さと行動力、そしてブレない精神である。自分の信念が人間らしいビジネスのやり方だと感じているからこそ、こういう道を選んだ人なのだろう。ビジネスと倫理とを相容れるブレイク・スルーを実現した人なのだと思う。本当にビジョンの商人である。

と こ ろ が だ。本書は綺麗事だけではない。
後半になってくると《大企業病》の話があり、個人的にそこが非常に面白かった。
米国進出の際に、それまで『健康志向&社会貢献』イメージとして《市場一番乗り》の利点を活かし続けたボディショップが、他企業の追随によって多くのコピーキャット(模倣)マーケティングに見舞われる。また商品アイデアよりも製造に気を取られて重点を置いたため、経営戦略の見直しやリストラクチャリングに迫られる結果に陥っている。

「ボディショップはもうユニークでもなく、新しくもなく、刺激的でも、挑戦的でもないという事実に直面した」(p.232)

マンネリ化はいつか訪れる。社会を《改革》するために起業という道を選んで活動し、一度成功すると次に企業自らの《改革》が必要となる。この外と内なる2つの《改革》は必ずどの組織においても重要なのだと本書で学んだ。