この分析手法を知った経緯は、DI立上げメンバーだったボスがBCG時代、入社して間もなく学んだことを、自分にも研修という形で教えてくれたことだ(というか「俺時間ないから適当に見といてー」という形で..)。従って内容はとても古いものだが、手法はいつの時代でも使えるので是非紹介したいと思う。
ケースは「一般酒販店の酒類販売活動の実態と消費者の購買行動」というもの。
"一般酒販店"とは、詰まる所の「酒屋さん」のこと。現在も激安なリカーやコンビニ併設の酒屋、デリバリーに特化したものなど数多くあるが、サザエさんに出てくる様なあの「ちわーっす!みかおやです」はもう殆ど見かけられなくなっている。
この事態を招いた要因は当時のコンビニ業界の台頭だった。自分も学部時代の榊原研で、先生から昔スタイルの酒屋さんがコンビニに駆逐された趣旨の話(正確には店主がコンビニのフランチャイズオーナーに転向する現象)を聞いていたが、インターンでこの一枚のスライドに出逢えたことに感銘を覚えた。
(出所:国税庁委託調査. 昭和56年10月. 簡単にExcelへデータを落として簡素プロットした再現)
このグラフは消費者ニーズの規模感を横軸にとって、
【消費者サイドからの選択理由】-【酒販店サイドの選択される理由認識】
を縦軸にとったものだ。同じ質問を相反する立場に聞いてギャップを測るというもの。
これを見ればすぐに酒屋さんは【アクセス】の重要性を理解しておらず、掛けや月賦販売、なじみの店の信用などが必要以上に気をつかわれていることが一目で分かる。
昭和56年のデータから一発で既にこの時代でコンビニの勢力台頭を予言出来ていたのだから素晴しいキラー・チャートだと言える(ちなみにWikipediaによるとコンビニは昭和44年から始まったとされている)。言うまでもなくこのチャートの肝は縦軸にある。
酒屋さんが消えた理由を"引き算"というちょっとした工夫で見事に描けるのが、自分にとって非常に新鮮だった。分析は工夫によっては非常に上質で示唆深いものになりうる。
去年のウィンタージョブではROEを向上させるために純利益×総資産回転率×財務レバレッジという分解で、乱暴ながらもエクイティー・ストーリーを描くことが勉強になった。
学部時代の伊藤良二研でも、リサーチ中にブーズアレンがサウジアラビアの政府公社に提案した一人当たりGDPを向上させるための3要素の分解を見つけたのを、今でも鮮明に覚えている。("Microsoft PowerPoint - SAGIA Final Report 26th August 2004"でググると一発で引っかかるけどconfidentialって書いてある..どうなんだろうか)
もちろん頭でっかちになると、「効率を上げる為に人員削減しましょうよ(=分母を減らす)」という乱暴な議論にもなりかねないので気をつける必要はある。従って現実感を持ってリストラなら組織のcapability等を考慮していかなければならない。コンサルがそんなBarbarianになれるのはバイアウトやコベナンツがバックにいる時だけだ。
それでも工夫した考えによっては上質な分析がブレークスルーをもたらすことがあるのだ。
日々の学生生活のデータのいじくりでは余り考えもせずに、縦軸・横軸を簡単において、当たり障りのない自明なグラフを描いて終わらせていた自分の反省もこめて、いろんな切り口を考えて分析のクオリティーをインターン生活で高める努力をしようと思った1年半前。。。そこから自分は今どれくらい成長してるのだろうか。。苦笑
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